地震とアスペルガー

大人になって診断が確定したAS当事者の復興の記録

アスペルガー、初めての就職に失敗(編集プロダクション編)。

アスペルガーの診断確定前に、初めて就職をした時のことを書きます。

 

大学ではまともな就職活動をせず、自分は写真関係の仕事で食っていくんだと息まいていました。

 

でも就職難の時代。そんな甘い考えは通用しません。

縁故採用の話も断って、おいしい仕事に就くのを自分から放棄していました。

多分アスペ独特の、不正なことはしないという自分の中のルールに、コネで入るというのが許せなかったんでしょうね。

 

そして就職できずに焦っていると、あま~い話がころがってきました。

 

インターネットが今ほど発達していない時(今は無きブラウザ・ネットスケープがある頃)、写真家になるより編集の仕事に就いて本を出した方が早いよという誘惑に負けて、不安定な個人事業主の編集プロダクションと雇用契約を結びました。

今ならその事業主の個人情報や出版物などを調べたり、評判を下調べできると思うのですが、そんなことはまだ不可能な時代でした。今思えばまだまだひよっこだった私は、したたかな大人のずるい考えを見抜くことができませんでした。

 

雇用契約を見ると期間の定めがすごく短く、今でいう契約社員のような状態でした。しかも試用期間の明確な定めがなく、諸条件として、私に何らかの精神的・肉体的被害が出た場合にも責任を一切負わないという事業主にとって都合の良いことばかり書かれていました(今でもその契約書は同じ失敗をしないために大事に保存しています)。

 

最初の頃は何もかもが新しく輝いて見えました。

自分が制作に関わった物が、社会に流通しているのを見るとそれまでの苦労なんて吹っ飛びました。制作物に名前が載っているだけで、それはもう有頂天でした。

 

でもそれは長く続きませんでした。

本の取材旅行でヨーロッパ各国を巡る旅という企画が決められました。
私は3ヶ月かけてドイツから西の国々をリュック背負って 一人旅です。

海外なんて行ったことがなく、多少不安があったのですが、仕事だからといわれれば、その企画いいですねと言う他は無く、行きたくもないのに行くハメになりました。

 

そしてその旅行費用は会社と私が折半。しかもこの旅行が成功に終わって、本が出版できたら正規採用と会社に都合がいい話ばっかり。でも新卒ですぐ失業してしまうのを恐れた私は行くしかなく、親に大金を借りて出発するのでした。

 

当時は猿岩石の旅が「すすめ電波少年」で放送されていた時代です。

私は当初はパートナーと離れるのが辛く、でも仕事だからと自分に言い聞かせ、シャルルドゴール空港に降り立ちました。

そしてソルボンヌ大学のそばのホテルに宿を取り、翌日からの宿探しをはじめたのです。パソコンもスマホも使えない時代。iのマークのインフォメーションへ行き、片言のフランス語で料金を伝え、近くの宿を紹介してもらいます。歩いて行ければユースホステルを選びます。

でもコミュニケーションに障害のある私には、ユースホステルで他国の宿泊客と仲良くなって行動を共にすると言うことができませんでした。

残念ながらお酒もあまりいける口ではなく、イギリスやアイルランドへ行ってもパブで一杯というスタイルがなじめず、水代わりにアルコールを飲む文化に徐々にストレスがたまっていきます。炭酸水があるお店が救いでした。

 

旅の話はいつかまた書くとして、就職の話に戻ります。

 

フランス、アイルランド、イギリス、オランダ、スイス、北イタリア、南フランス、スペインと回るうちにだんだん精神的に不調になってしまいます。日本語が使えず、英語もあまり通用しない地域を一人で回っているとなんだかおかしくなりそうです。夏目漱石が留学中に不調になった理由が分かるような気がします。

しかも夏の熱い日差しで、肉体的にも疲労が蓄積します。

デジカメのない時代、一眼レフカメラに大量の予備電池、そして大量のフィルム。

収集したパンフレットや雑貨たち。荷物の重さもだんだん私を苦しめます。

 

そしてスペインで精神が限界に。。。

 

これ以上続けていたらこわれそうだった私はパリへ戻り、飛行機の空席を待ち続け日本へ帰りました。

 

そして気力を回復するのにゆっくりパートナーのそばて心を休めていました。

もうこの時は治療を要する鬱状態だったみたいです。

 

でも事業主が帰国してからの発言に、私は追い打ちをかけられ、社会の厳しさを思い知らされたのです。

 

「取材旅行を中途半端に帰国したのだから、契約不履行で解雇。
(旅のヤラセを棚に上げ)猿岩石の二人を見習え」と叱責されます。

(ヤラセ無しでも、二人旅ならもっと楽だったと思います・・・) 

そして今でいう新卒切りに遭いました。大学卒業してわずか半年で失業してしまいました。私は故郷の親に合わせる顔がなく、どうにかしてこの街で生きていこうとあがくハメになるのでした。

 

そして解雇しておいてさらにひどいのが、「君は大企業に入って、社会人としての常識を教育してもらった方がいいよ」という言葉にはじまる人格否定など退職する者に容赦ない言葉を浴びせます。

 

さらに事業主に都合のいいのが「マック(当時はフリーズすることが多かった)のメンテナンスに関して月額1万円でサポートしないか?」というお金に困った私を利用する発言です。しかも定額制で時間を問わず、月に何度でも出張サポートせよという条件です。私もそれ以上その人と関わるのは辛く、さすがに断りました。

 

そんなこんなで旅の疲れもあり、解雇された直後から精神的不調が表面化しはじめ、精神科通いが始まりました。今でも、極度の鬱状態の発症原因はこの事業主と業務内容にあると思っています。ですので当時の契約書や資料などは保管しています。いつかできるならば、事業主から失われたモノを取り返したい思いが消えません(当時は契約書は絶対だと思っていたので、裁判することはあきらめていました。今はそうは思いませんが・・・)。

 

当時の嫌な記憶がフラッシュバックすることも多く、今でも時折苦しんでいますが、新しい記憶を増やしていくことで、古い記憶を薄めていくしかないんでしょうね。

 

私からのアドバイスとしては、雇用契約書はよく読んで、分からないところは調べたり、聞くなどしてからサイン。考える時間を与えず署名捺印を強要するような態度や正社員への登用をちらつかせながらの条件の違う雇用契約には気をつけてください。

これから就職する新卒の人は、おいしい話にはうらがあるので注意して下さいね。

 

アスペルガーの人は一人で判断しないで、誰かと相談しましょう。

しかるべき人がいなければ、公的機関(発達障害者支援センターや障害者職業センター)を使いましょう。

あと職業適性検査は早い段階で調べておいた方が、失敗が少ないと思います。

転職を繰り返すとだんだん条件が悪くなることが多いです。失敗を恐れずチャレンジすることも大事ですが、アスペの人は慎重に行動した方が、後悔が少なくてすむかもしれません。

 

また就職の失敗については書いていきます。

毎日新聞の連載で興味深いリアル30'sが出版されるみたい

毎日新聞にさまざまな30代の生きざまが垣間見られる連載があった。

リアル30'sという記事だった。

この度書籍化されるらしい。

 

新聞をスクラップする習慣がない私にとっては、単行本化は喜ばしいかも。

電子書籍で安く買えるならもっといいよね。

 

自分の境遇に当てはまることも多かったので、共感する内容が多い。

心身障害があってもなくても、さまざまな悩みに翻弄され、もがき、苦しんでいる人たちが大勢いることに気づかされる。

苦しんでいるのは自分一人ではない。

世代は違っても今の生きづらい時代の根底にあるモノは同じではないだろうか?

自殺者は年間三万人、未遂を含めたその予備軍はもっといる。

そんな殺伐とした時代に、自分以外の他者はどうやって生きようとしているのか?

興味がある人は一読することをお勧めしたい。